6.生体肝移植に至るまで
これからは、少し専門的になりますが、今後、手術を予定されている方等の参考になればと考え書いてみました。
難しいと思われましたら、第7章「インフォームドコンセント・ドナー決定までの流れ」へスキップしては如何でしょうか。
6.1.診断
血液検査の結果からC型肝炎ウイルスにより、肝臓の機能が低下しており、軽度の食道静脈瘤が発達していること、画像診断から肝臓が萎縮し、肝臓の表面に凸凹が生じていることなどの所見を併せると慢性肝炎の終末像であるC型肝硬変の状態に至っているものと診断された。ただし、超音波検査、CT検査・MRI検査などの画像検査より、明らかな肝細胞癌の合併は認められなかった。
6.2手術3ヶ月前の病状(2002年12月)
安静、塩分制限、利尿剤の使用、アミノ酸製剤投与等の治療にも関わらず肝性脳症を認め、また完全に消失しない腹水やビルビリン高値を認めており、アルブミンを含めたタンパク質の一種である凝固因子の産生が低下し、かつ血小板が低下していることから出血傾向が潜在していると考えられた。
また、食道静脈瘤も合併しており、今後、肝不全の進展・出血・脳症の発現・感染症などにより生死に関わる事態が起こりうる状態でした。
肝硬変における肝不全と合併症の症状はお互いに重複しており完全に分別できませんが、各々の主な症状及び治療法は以下の表のようなものがあります。しかし、6.3項に記載したように肝硬変重症度を考えた場合、肝臓移植を考慮しなければならない状態でした。
症状 | 治療(代表的なもの) | |
---|---|---|
肝不全 | 脳症・高アンモニア血症 腹水 黄疸 低アルブミン血症 出血傾向 |
蛋白制限、分枝鎖アミノ酸製剤、ラクツロース 塩分制限、利尿剤 栄養管理、アルブミン製剤 |
合併症 | 食道・胃静脈瘤 出血性胃炎 感染症 呼吸不全 腎不全 肝細胞癌 |
内視鏡的治療・薬物療法・経頚静脈的門脈大循環シャント術(TIPS) 胃酸分泌抑制・薬物療法 抗菌剤等 エタノール注入療法、肝動脈塞栓術、ラジオ波治療、化学療法、肝切除術 |
6.3肝硬変重症度
肝機能の程度を表すChild-Pugh分類方法*1は下表を用いて計算します。
スコア |
1 |
2 |
3 |
ビリルビン(mg/dl) |
<2 |
2〜3 |
>3 |
アルブミン(g/dl) |
>3.5 |
2.8〜3.5 |
<2.8 |
プロトロンビン時間(延長・秒) |
1〜4 |
4〜6 |
>6 |
〃 (%) |
>70 |
40〜70 |
<40 |
肝性脳症 |
無 |
軽度(T〜U) |
昏睡(V度以上) |
腹水 |
無 |
軽度 |
中程度以上 |
以上の5項目について検査成績・症状を当てはめ各々1〜3点と点数を付け、その合計点で分類すると
糸田敬弘の場合は
ビリルビン 1.3 mg/dl 1点
アルブミン 2.0 g/dl 3点
プロトロンビン時間 34 % 3点
肝性脳症 軽度 2点
腹水 軽度 2点
合計 11点(C)
*1 Child-Pugh(チャイルド・ビュー)分類
臨床所見と機能検査を組み合わせた肝硬変重症度の判定法。ビリルビン、アルブミン、プロトロ
ンビン時間、肝性脳症、腹水の各項目を重症度に応じて1〜3点にスコア化し、その合計が5〜
6点をclassA、7〜9点をclassB、10点以上をclassCと3段階に分類する。
Child-Pugh分類Cの場合、累積生存率は診断1年後には60〜70%、2年後には約50%、3年後には、
約30〜40%となる。これは診断時からの成績であり、私の場合は2000年の入院時の時点で既に9〜10点
のChild-Pugh分類B〜Cの状態であった。その時点から既に2年を経過していました。
図1 図2
図1の見方は、たとえばChild-Pugh分類Aの肝硬変患者さんが100人いらした場合、50人の方が存命である時期(累積生存率50%)y軸の50%をたどることにより診断後6〜7年後ということが読み取れます。同様にBでは4〜5年後、Cでは2〜3年後が累積生存率50%の時期にあたります。
また、逆にx軸からたどるとことにより診断後の経過時間と生存率の関係が分かります。例えば、Child-Pugh分類Cでは診断1年後には、約60%〜70%、2年後には約50%、3年後には約30%〜40%であることがわかります。 図の出典:金沢大学附属病院dataより
図2は、B型及びC型のウイルス性肝硬変患者の場合、亡くなられる0.5、1、2、3年前にスコアが11〜12点に達した以降は、急速にスコアが悪くなり、亡くなられているそうです。
私の場合は、上記に述べたようにスコアは11点に達していました。
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